知らなくてもいいこと

世界の戦争や難民、貧困、そこにいる人たち、その地域。日本にいたら、知らなくてもいい(かもしれない)ことを実体験から。

シリアの子どもカルタ展 Part 4/4

  22. ك (kaf)

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サッカー選手になりたい 絵札

 

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サッカー選手になりたい 読札

ひとこと解説:シリアの子ども達はサッカーが大好き。サッカーをしているところに、銃弾が飛んでくる絵を描いていた子も少なくありませんでした。この絵ではふつうに試合ができています。

 

23. ل (lam)

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家族は私の人生 絵札

 

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家族は私の人生 読札

ひとこと解説:「〜は私の人生」というアラビア語の表現は、「〜が大好き、愛している、大切」という意味があります。

 

24. م (mim)

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お母さんは私の人生 絵札

 

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お母さんは私の人生 読札

ひとこと解説:「お母さんは私の人生/お母さんが大好き」という表現の二作目です。

 

25. ن (nun)

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ふるさとに帰る 絵札

 

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ふるさとに帰る 読札

ひとこと解説:絵の向かって右側のゲートはトルコの国境検問、左側はシリアの国境検問です。みな荷物を抱え、トルコからシリアへと帰っていく様子。トルコ側からは、手を振って見送る人達も。

 

26. ه (ha')

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エンジニアになりたい 絵札

 

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エンジニアになりたい 読札

ひとこと解説:エンジニアは子ども達に人気の職業。エンジニアになることを夢見て大学進学を目指しています。

 

27. و (waw)

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平和な日 絵札

 

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平和な日 読札

ひとこと解説:シンプルな表現ですが、みんなの願い。絵にたくさんの人が登場しているように、たくさんの人の想いが詰まっています。

 

28. ي (ya')

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新しい日、新しい希望 絵札

 

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新しい日、新しい希望 読札

ひとこと解説:こちらもシンプルな表現ですが、ポジティブなエネルギーが伝わってくるようです。いまはない、自分の部屋やベッド、本棚、お日様が差し込む窓、頑丈なドアがあるお家に住めることも願いのひとつ。

 

 

作品は以上です。最後までご覧いただき、ありがとうございました。少しでも、みなさまの希望の励みにもなれましたら幸いです。

もしよろしければ、サポートをお願いいたします。カルタを一緒に作ったシリアの子ども達を支える教育・発達支援活動に活用いたします。

ありがとうございました!

 

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想いを描いた女の子



シリアの子どもカルタ展 Part 3/4

 15. ض (dad)

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シリアの土地は神聖な私の魂 絵札

 

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シリアの土地は神聖な私の魂 読札

ひとこと解説:ハートのなかにあるのはシリアの国の形。アラビア語で「シリア」と書かれています。戦争や避難生活を経験しながらも、子ども達の心の中にはいつもシリアが。描き消された人物は。

 

16. ط (ta')

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自然が好き 絵札

 

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自然が好き 読札

ひとこと解説:シリアではどの家族も、大きなお家とお庭をもっていたそう。平和で自然に溢れていたシリアを想像できます。

 

17. ظ (za')

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清潔さは信心深さ 絵札

 

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清潔さは信心深さ 読札

ひとこと解説:子どもの頃からイスラム教の教えを学ぶ子ども達。清潔さを保つことも学んでいます。

 

18. ع ('ayn)

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先生になりたい 絵札

 

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先生になりたい 読札

ひとこと解説:学校の教室が描かれていますが、いまこの絵を描いた子が学んでいるのはテント教室。しっかりとした建物の学校に行きたいという願いも。

 

19. غ (ghayn)

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読書で人生を変えよう 絵札

 

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読書で人生を変えよう 読札

ひとこと解説:いまテントや土壁の手造りの家屋で避難生活をしている子ども達は、本棚も大きな机や椅子も持っていません。たくさんの本を読めるだけでなく、この絵のような環境にいられることも、この子の夢です。

 

20. ف (fa')

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忍耐が終われば勝利 絵札

 

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忍耐が終われば勝利 読札

ひとこと解説:いつもの子ども達の絵に登場する戦車や戦闘機の前には、破壊された建物や血を流した人が描かれていました。子ども達にとっては、まだ“忍耐”のとき。ここでは“勝利”と訳しましたが、「الفرج」は“ハッピーエンド”や“悲しみからの解放”、“安堵”といった意味もあります。

 

21. ق (qaf)

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次のページはよりよい 絵札

 

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次のページはよりよい 読札

ひとこと解説:本のページにはそれぞれ、シリアが描かれています。向かって右のページには大きな✖️、左のページはハートや花々。自分たちの手で次のページが描かれています。

 

つづきはPart 4で!

シリアの子どもカルタ展 Part 2/4

 8. د (dal)

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国を再建するのは私の務め 絵札

 

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国を再建するのは私の務め 読札

ひとこと解説:戦争により自分の家や学校、町が壊されてしまいました。ブロックひとつひとつを運び、建て直しているのは学校です。

 

9. ذ (dhal)

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枯れた後には育つでしょう 絵札

 

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枯れた後には育つでしょう 読札

ひとこと解説:戦争で破壊されている自分の町は、いま「枯れている」のかもしれません。植物に例えて、また国が美しく咲き誇ることを諦めていません。

 

10. ر (ra')

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春のピクニック 絵札

 

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春のピクニック 読札

ひとこと解説:シリア人の方々は休日のピクニックが大好きで、子ども達が住んでいた家の周りにもきれいな自然がありました。

 

11. ز (zay)

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収穫のために植える 絵札

 

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収穫のために植える 読札

ひとこと解説:避難先のトルコでも家族の農作業を手伝っている子ども達。いまはトルコ人地主の土地で働いていますが、自分の土地を持ちたいそうです。

 

12. س (sin)

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画家になりたい 絵札

 

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画家になりたい 読札

ひとこと解説:お医者さんやエンジニアになりたいという子どもが多い中で、画家になりたいという子は珍しいです。テント教室でのお絵かきが楽しいそう。

 

13. ش (shin)

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果実を食べるために木に水をやる 絵札

 

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果実を食べるために木に水をやる 読札

ひとこと解説:いま子ども達が避難生活を送っている農村部は綿花畑で、花々や果物の木はありません。きれいな自然はシリアのものだそう。

 

14. ص (sad)

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熟練した漁師になりたい 絵札

 

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熟練した漁師になりたい 読札

ひとこと解説:シリアの子ども達のふるさとには川が流れています。ふるさとに戻って漁師になりたいそう。

 

つづきはPart 3で!

シリアの子どもカルタ展 Part 1/4

 1. ا ('alif)

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お母さんは私の人生 絵札

 

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お母さんは私の人生 読札

ひとこと解説:「〜は私の人生」というアラビア語の表現は一般的に使われ、特に大好きな/愛する人を意味します。 

 

2. ب (ba')

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お医者さんになりたい 絵札

 

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お医者さんになりたい 読札

ひとこと解説:子どものなかには、戦争により被害を受け病院に運ばれた人の絵を描く子もいます。この子は、人の命を助けるお医者さんになりたいそうです。

 

3. ت (ta')

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学校は私の第二の我が家 絵札

 

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学校は私の第二の我が家 読札

ひとこと解説:戦争で学校へ行かれなくなってしまった子ども達。子ども達にとって大好きで大切な学校も壊されてしまいました。

 

4. ث (tha')

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必要とする人々への救済 絵札

 

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必要とする人々への救済 読札

ひとこと解説:絵札の向かって右側に建っているのは子ども達が生活しているテント、左側には援助物資を載せたトラック。

 

5. ج (jim)

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真面目に頑張れば成果を得る 絵札

 

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真面目に頑張れば成果を得る 読札

ひとこと解説:原文はアラビア語の諺のようなもの。絵札の中では勉強で頑張った生徒が先生から「おめでとう」と書かれた風船のついたプレゼントをもらっています。

 

6. ح (ha') 

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父親と一緒にいる子どもの楽しみ 絵札

 

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父親と一緒にいる子どもの楽しみ 読札

ひとこと解説:シリア人の方々はみな、戦争により誰かを失っています。それが家族であることも。この子にとって、お父さんがいることはかけがいのないこと。

 

7. خ (kha')

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新しくよいことを植える 絵札

 

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新しくよいことを植える 読札

 ひとこと解説:希望を表すときに、なにかを植える表現をした子どもが多かったです。いまはまだ遠い“希望”が、自分達の手で植えられると感じられていることに、希望をもらいます。

 

つづきはPart 2で!

シリアの子どもカルタ展 Introduction

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 “シリアの子どもカルタ展”へようこそ。

 

トルコで避難生活を送るシリア人の子ども達と、カルタをつくりました。

絵札や読み札に使われている絵や文章は、子ども達がかきました。

戦争と避難により学校に行かれず、字の読み書きや友達と遊ぶ機会がなかった子ども達。テント教室に通い、母国語であるアラビア語を書けるようになったり、色を使って絵を描けるようになりました。

 

初めは鉛筆の持ち方を知らなかったり、「自由に」絵を描くことも難しかったです。

勉強したり遊んだりといった子どもとして当たり前にできるはずのことを、してこられなかった彼ら/彼女らの経験不足を少しずつ補ってきました。

 

戦闘機や戦車、死体、血が流れている絵を描くこともあります。

このカルタづくりでは、子ども達の好きなことや夢を表現してもらいました。カルタとして完成したことで、子ども達の夢が一歩実現しました。カルタは無事に、子ども達に届きました。

 

本来は、カルタ完成後に子ども達の原画と共に展覧会を開催することも考えていました。残念ながら新型コロナウイルス感染症の拡大により、展覧会実施の見通しを立てられないため、こちらで公開いたします。

いま、世界中で忍耐強さが求められています。子ども達の絵や文章が、世界中へのエールにもなることを願います。

 

このカルタづくりは、メリーファンディングにより実現しました。プロジェクトの詳細はこちらからご覧ください。

www.felissimo.co.jp

 

 

子ども達の絵からカルタへデザインしていただいたのは、神戸でみんなでアートしよう!!+株式会社コウベノモリトのみなさまです。

www.facebook.com

 

作成に携わってくださったみなさまに、心から御礼申し上げます。

 

どうぞお気軽に、この展覧会をお楽しみください。

 

※カルタについてちょこっと説明

このカルタは、シリア人の子ども達の母国語であるアラビア語から作りました。

アラビア語は28文字あるので、28組の絵札・読札があります。アラビア語の文法や、子ども達の表現力から、“必ず文頭にその文字を使う”というルールは緩くなっています。アルファベットとカッコ内で読み方を記載しています。ちなみに、アラビア語は日本語とは逆に右→左に書きます。この活動は、特定非営利活動法人ホープフル・タッチの子どもの教育・発達支援活動の一環として実施しました。

www.hopefultouch-jp.org

 

 

 

カルタの絵や文章をかいた子ども達

 

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子ども達が学ぶテント教室

 

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アラビア語やトルコ語、算数などを勉強

 

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子ども達が大好きなお絵かきの時間

 

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戦争での体験を描く子ども達も

 

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「日本」「トルコ」「シリア」の繋がりを描いた男の子

 

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カルタを受け取った男の子

 

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カルタを並べて観察

 

予防できる選択肢をもてること

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スーダンでの感染対策一例

 

“平和ボケ”という言葉は抽象的であまり使いたくないのですが、今回の新型コロナウイルス感染症への日本国内での対応をみていると、なんとなくそう感じてしまいます。

 

国際支援活動をやっていると、日本の今の雰囲気に違和感を憶えざるをえません。あれだけ厳しい日本の危機管理意識はどこへ?とぽかんとしてしまいます。

 というのも、日本の政府系の資金を事業で使おうと思ったら「これじゃぁ活動できないじゃん!」となるぐらいセキュリティチェックが厳しいので。

 

緊急人道支援では、情勢が変化しやすかったりセキュリティが万全でない地域で活動する必要があります。しかし日本政府の資金を使って活動しようと思ったら、事業の質どうこうよりもまず、対象地域の安全性と団体としての安全管理体制をチェックされます。日本の外務省は次のように各国各地域の安全性をレベル分けしています。

 

  • レベル1:十分注意してください。
  • レベル2:不要不急の渡航は止めてください。
  • レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)。
  • レベル4:退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)。

 

緊急人道支援を必要とするような地域は、たいていレベル3〜4です。レベル感の一例としては、レベル4は戦時中の地域、レベル3は戦時中の地域との境界地域(国境など)。私たちのこれまでの活動も、レベル2〜4といったところです。

 

日本のNGOが外務省からお金をもらって活動しようとしたら、一般的にはレベル3以上の地域では活動できません。ただ、この指標は「日本人が渡航するにあたって」という意味合いが強いので、他の現地団体をカウンターパートとして(日本人は入域せず遠隔管理)実施するなら可能な場合もあります。

 

いずれにしろ、それなりの地域で活動するなら、それなりの安全管理体制が必要、イコールそれなりの団体規模(資金)と経験が必要ということになります。

 

私たちは公的資金を未だ使ったことがなく、民間の助成金やご寄付によってこれまで活動を続けてきました。団体の経験不足、と言われてしまえばそれまでなのですが、公的資金を使いにくいのは確実に活動地域のレベルが2以上、という点もあります。

 

もちろん安全管理体制はどんな団体にも必要なのですが、厳しく整備していこうとすると、かなりの行動制限と予算オーバーとなり、「これじゃぁ大金使って日本人スタッフを守るための活動になって、誰のための活動かわからなくなる!」と正直、私なんかは思ってしまうのです。

 

現地の仲間にも、あまりの日本政府の「安全第一」理念を皮肉られることもあります。

 

そんな日常があったので、「日本人を守るために安全管理体制は厳しい/リスク管理にはうるさい」という日本政府のイメージをもっていました。

しかし、新型コロナウイルスに関する世界中の政府や国民の対応をみていると、日本の“危機判断”の低さに気づかずにはいられません。

無防備だったり、過剰反応でパニック化したりと、“危機”の評価や対策に慣れていないのかもしれません。

 

残念ながら、いま私が活動地に渡航できず日本で足踏みしているのは、活動国政府が早い段階から入国制限をしているためです。あんなにいつも政府として機能していないスーダンでさえ(失礼)、実質一切の入国禁止とは。

トルコ、スーダン、カンボジア、政府から実質分離されているシリア北東部地域でさえ、市民評議会からの通達で教育機関は休校となっています。

 

仲間(シリア人やスーダン人)によると、現地の方々は自主的に外出を控えたり、マスクや代用の布で口や鼻を覆ったり、商店やレストラン・カフェを休業したり、市場への人の集中を避けたり、と個人レベルでも危機感を強く感じているそうです。普段きれいな水で手を洗わないスーダン人でさえ(同上)。

 

もちろん、ふだんの衛生環境が悪く衛生教育が行き届いていない地域での感染拡大は、想像しても恐ろしくなります。世界の国々で発生している打撃以上となるのは確実です。そういった地域では日本以上の危機管理が必要で、政府や人々の危機感が高まるに越したことはありません。

 

また、危機感や必要性に関わらず、世界には事実感染予防できない状況にある人々もいます。

  • 難民キャンプ内外で、強制的に密集した場所に居ざるをえない。
  • 手を洗う石鹸がない、水がない。
  • 家に留まるといっても、安全な住居がない。
  • 衛生用品を購入する貯蓄がない。  ...

 

 

比較して解決することではありませんし、一般化できることでもありません。

しかし日本国内において、政治的にも人々の意識としても、少なからずまだ予防対応できる選択肢はあるのかもしれません。選択肢がなくなってから気づくのでは、手遅れです。

常日頃から、社会全体の生命を脅かすような“危機”があっては困りますが、突然の“危機”への適切な評価や対応できる力は必要なのかもしれません。

知らなくてもいいこと

 

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シリア人の子が描いた絵「忍耐が終われば勝利」

 

このブログでは特定非営利活動法人ホープフル・タッチのスタッフブログとして、団体ホームページでお伝えしている活動報告以外の、より日常的な話題を扱っていきます。

 

ブログ名である「知らなくてもいいこと」は、このブログで話題とするのが、日本でふつうに生活していくためには“知らなくてもいい(かもしれない)こと”だからです。

私たちが活動してきたトルコ、シリア、スーダン、カンボジアの現状や人々、生活、社会のことなんて、日本で生きているなかで必要な情報ではないかもしれないと思っています。

正直、日本人として日本で生活するぶんには、シリアの戦争や避難民、スーダンのデモや民政移管、カンボジアの水上コミュニティのことなんて、知らなきゃいけないことではありません。高校生の頃から10年以上なんらかのNGO活動に関わり、自らこの団体を立ち上げ、細々とでも活動を続けてきた者がこんなことを言うのはなんですが。。。

 

私たちは弱小NGOなので資金がいつまで続くか、いつも不安を抱えながらのギリギリなので、切羽詰まってお金が必要、広報が必要ということは事実です。でも、世界の色々なことを無視しながら、無関心でいながら、偏見をもちながらでも、日常生活に支障はないのが今の“日本”であるという事実も感じています。

 

“知らなくてもいいこと”で放っておいても何の問題もないという事実が、望ましいのかどうかは、人それぞれに考え方があると思います。

 

一方で、私たちの活動地域に限らず、世界の動きを“知らなくてもいいこと”として放っておけないことを実感し始めている人も、増えてきている気がします。

別に人道的・慈善的な思いを持っていなくても、世界がどれだけ繋がっているのか/互いの生活に影響を及ぼし合いうるのか、今回の新型コロナウイルスの感染拡大と生活への影響で感じた人は多いのではないでしょうか。

 

遠い国で起きていることは、「知らないし想像がつかない」という声をよく聞きます。「なにかできたらいいけど、自分ではわからないから」という想いをもってくださる方もいらっしゃいます。

それは、私たちのような何らかの形で携わっている者がうまく情報発信できていないという鋭いご指摘でもあります。

 

もし、どのように世界を想像できるかご提案できるとすれば、新型コロナウイルスで世界が直面している影響は、シリアからの避難民の方々が2011年から体験してきた生活と、まったくかけ離れているとは言えません。

  • 子どもが学校に行かれない
  • 仕事がなくなる
  • 収入が少なくなる・なくなる
  • 行動が制限される/一定地域から出られない
  • 事実に関わらず国籍だけで偏見をもたれる(感染していないのにアジア人というだけで感染者扱いされる)
  • 自分の国に帰れない(感染予防により世界中で国境閉鎖や出国・入国規制措置が取られている)
  • いつ自分の健康や生死が脅かされるかわからない
  • この状況がいつまで続くのかわからない .....

 

もちろん、飛躍しすぎた想像の方法かもしれません。事態は大きく異なります。

そんな想像をしたところで、自分の生活においてなんの解決にもならないでしょうし、それこそ“知らなくてもいいこと”かもしれません。

 

私ができるのは、そんな“知らなくてもいいこと”を、私たちが活動を通じて知ってきた範囲でお伝えすることぐらいです。私たち自身が知らないことのほうが、無限にあります。

 

冒頭の絵は私たちの活動のなかでシリア難民の子どもが描いたもので、「忍耐が終われば勝利」という題名です。「勝利」の形は人それぞれですが、いま世界は、希望を失わず耐える時かもしれません。